Aさんのケース(被告案件、一部引出を否定し、一部使途を説明した事案)
ご相談の経緯
Aさんは三姉妹でしたが、Aさんだけ独身で、遠くに嫁いだ姉と近県に住む妹がいました。Aさんは母とごく近くに住んで交流をしていました。だんだんと体と心の弱った母を見かねたAさんは、10年ほど前から実家を訪ねる頻度も多くなっていました。
母は、最初の5年くらいは、比較的元気で、自分のことは自分で行っていましたが、だんだんと、身の回りのこと、炊事洗濯、銀行回りなどが出来なくなり、Aさんが介助していました。
母が亡くなり、姉から、母の預貯金の不正利用を指摘されました。姉の指摘する不正利用の総額は1億円を超えていて、Aさんも金額の大きさに驚きました。
姉の指摘する引き出しは10年間で1億円超えで、Aさんには最後の5年間くらいは記憶にあるものの、それ以前はAさんが引き出したか、母が引き出したか、たまに来る妹が引き出したかAさんにも今となっては不明でした。
経過
姉は、銀行の出し入れの履歴を証拠にAさんに返還を求めてきました。
Aさんの初動
記憶があいまいな5年より前5年間の引き出しは全てAさんの関与を否定しました。Aさんにとって、引き出しのいくつかはAさんが行ったとも思えたのですが、母が比較的元気で母自身の引き出しも否定できない以上、そのように答弁することに決めました。
姉が地方裁判所に提訴
Aさんは最初の方針通り、5年より前5年間の引き出しに関与したことは否認、過去5年間の引き出しは母が弱ってきて、自分に託されたとして使途を説明しました。
裁判所が、5年より前5年間の引き出しは、Aさんが関与した証拠がなく、Aさんの不当利得とは言えない、過去5年分のみ使途の説明を吟味するが、証拠のない引き出しも、日々の生活費は控除されるし、定期性のある医療費や介護費などは、いちいちが証拠がなくても、適正な使途として認定する方向であるとして、Aさんの使途不明金は1000万円とする心証を開示し、姉に300万円返還するという和解案を提示しました。
結果
Aさんは結果、和解しましたが、判決に至っても、裁判官が一度示した心証から乖離した判決はあまり出ない傾向です。